最大35%の差がつく!?富裕層のずるい節税
| 税務調査
DIAMOND online 2016.7.27投稿
富裕層の節税の基本は、
「差」を利用すること
ストックを擁する富裕層のうち、現役でフローを稼ぐ人たちがいる。フローの税対策(主として所得税)の場合、いろんな「差」を利用することが重要になる。
所得区分による「差」
日本の所得税は、所得が高くなるほど税率が高くなる、「超過累進税率」を採用している。所得を事業や給与など10種類に区分して、区分した所得ごとに計算して、それぞれの所得金額を「合計」した額に累進税率を乗ずる。これは総合課税と言われるもの。
総合課税のほかに、申告分離課税(本人の所得に関係なく定率課税)となるものや源泉分離課税(源泉徴収だけで課税が完結する)などがある。
総合課税の最高税率は55%(うち住民税10%)、申告分離なら20%(うち住民税5%)となるので、仮に最高税率の富裕層なら、総合課税ではなく申告分離で済むような「出口戦略」が必要になる。同じ金額で35ポイントも差が出るので、当然に手取り額に大差が出る。
総合課税の所得でも、一時所得や退職所得にすれば大幅な「控除額」が認められるので、スキーム策定に当たっては富裕層が最後(課税時期)に手にする金を見極めて行われる。
国による税率の「差」
税は国による専権事項である。世界の所得税を見ても税率には差がある。ただ、所得に対する税負担率は、社会保険料を加えて比較しないと本当の意味での税負担率は見えないと思う。そうはいっても、所得にダイレクトに課税される所得税率は影響が大きく、富裕層の究極の所得税節税は「国と国との税率差」を利用したものになる。
タックスエグザイル(税金亡命)とでも呼べばいいのか。日本居住者を捨てて(国籍は関係ない)、外国居住者となることにより、日本の所得課税から逃れることを選択する富裕層がいる。
例えば香港やシンガポールの場合、所得税率は16%前後である。マレーシアのタックスヘイブンエリアに法人設立して、クアラルプールに居住した場合などは、所得税をゼロにするスキームも実現可能だ。日本からの距離や外国語に支障がなければモナコ(所得税ゼロ)という選択もある。もちろん、「非居住者化」対策は必要である。
パーマネントトラベラー(永遠の旅人)とは?
最後に少し変わった角度からも見てみたい。
どこの国でも、所得税が課税されるのは、「その国の居住者」が対象となる。では、反対にどこの国の居住者にもならなければどうなるか。当然にどこの国も課税できないことになる。仮に5ヵ月毎に国から国を渡り歩いたとする。183日ルールで居住者判定する国もあるので、無難に半年未満で移動すればセーフになる。
ただ、実際の問題として、どこの国からも課税されない可能性がある反面、いろんな国から課税されるリスクもある。日本国籍者が世界中をフラフラしてたら、国税庁は課税しようと狙うだろう。仮に2ヵ国以上の国で課税された場合、租税条約締結国間であれば二重課税は回避できるが、租税条約がない数ヵ国から課税されたなんてことになると、目も当てられない。五重課税なんてのもあったりして。
パーマネントトラベラーは、事業から退いた資産家が行うならわかるが、所得を稼得している現役が行うには現実的ではないと思う。もっとも、IT系の新富裕層ならイケるのかも知れないが。