仮に重加算税が賦課決定された場合についてコメントしています。
コメントにはない、個人的な意見は次のように考えています。
そもそも検察は背任で吊し上げたかった。がしかし、背任での立件は困難で断念せざるを得ないが、なにせ上げた拳をただでは下ろせない。世論が許さないからだ。何も立件できなければ検察批判になるおそれがある。
現金に色はついていないので、捜索で発見したキャッシュ一億円が、当該案件で受け取ったキックバックかどうか、検察だけでなく本人さえも本当のところは立証はできないと思う。
私立大学の理事長を長年やってきたから、あの年齢で一億円あっても全然おかしくない。想像では日大関連企業からの役員報酬などもあるのではないか。オモテの金の蓄財も、金庫のキャッシュの原資になってるのは疑いのないところである。妻が営業しているちゃんこ屋もしかりである。
報道を見ただけだが、2つの争点が浮かんだ。色んな報道を見るたびに、私が代理人なら(笑)、どう争えるかを考えるのが癖になっている。
ひとつ、報道では所得税の所得区分は「雑所得」とのこと。所得税では、所得区分ごとに課税方法が異なる。キックバックを支出した側は法人も含まれていたのでは?大阪の医療法人とか建設会社とか。法人側があくまで「寄附です」と突っ張れば、一時所得の論点の余地があったのではないかと。法人から個人への寄附は「一時所得」である。
一時所得ということになれば、脱税起訴基準に満たない(所得が半分計算になるから)だろう。課税区分誤りというカテゴリーなら、刑事事件にはなじまないことを、代理人が主張したしても戦術としてはアリだと思う。
ふたつ、重加算税をかけるなら、「隠蔽」または「仮装」の事実を課税側が立証する必要がある。あくまで行政処分なので刑事事件の経過・結果には左右されない。前述のとおり、現金には色がないうえに、自然人(個人)は帳簿や書類を作成していないことが多々である。となると、刑事事件で有罪になっても行政のペナルティは一番重い重加算税を適用できないということもある。
これは、脱税を罰するのは所得税法の「不正」の罰則規定、重加算税は国税通則法の「隠蔽または仮装」が根拠の重加算税規定、というように適用する法律が異なるので、刑事と行政の処分結果が異なっても仕方がないことではあるが。
刑事事件の弁護側の駆け引きは、執行猶予をとりにいくときには完全白旗をあげるので検察の指摘を丸飲みするのが通例のようである。多少の不服があっても弁護方針はそうなる。つまりは自白が決定打となる。
仮に課税で再調査の請求(旧異議申し立て)をすると、刑事事件で「反省してない」とか言われるのが嫌だから泣き寝入り、静観することになるのが一般的なケースだろう。ただし、事実認定で重加算税を賦課決定できない場合は過少申告加算税の賦課決定というのもある。
いずれにせよ、納税者への加算税通知は、修正申告した月の翌月か翌々月にされる。実際の加算税が過少申告加算税なのか重加算税なのか、とても興味があるので引き続き注目したい。
なお、大学の理事長が私服を肥やす背任行為は、断じて許せないことであります。既述の文章は、決して元理事長を庇うものではないことを、念のため申し添えます。