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「財務副大臣の滞納常習」についてコメントしました

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(主な部分を抜粋)

岸田内閣を支える神田憲次財務副大臣(60)が税金を何度も滞納し、自身の所有するビルが過去に4回差し押さえられていたことが分かりました。取材に対し、副大臣の事務所は「深く反省しています」と回答しています。

税理士でもある神田氏が代表取締役を務めるコンサルティング会社が2012年に購入したのが、名古屋市中区にある5階建てのビルです。ところが、不動産登記簿を見てみると、神田氏が国会議員になった翌年の2013年から2022年まで合わせて4回、名古屋市から税金滞納処分でビルを差し押さえられていたのです。

すべての差し押さえが解除されたのは、今年1月4日のことです。

元東京国税局 佐藤弘幸税理士(56):「本人が申告漏れだとか、滞納ということになると、税理士制度自体の信頼を揺るがすことになってしまうので。税理士法上の信用失墜行為に該当することがあるんですよね。その場合には、任命権者の国税庁長官が業務停止だとか。厳しい場合には、業務禁止だとか懲戒処分もすることがあります。税をつかさどるというか、生業にしている方なので、特に一般の人に比べれば、専門家として守らなければいけない話」

神田氏側に確認すると、差し押さえについて事実だと認め「深く反省している」と回答しました。

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ニュースは尺に限りがあり、私の感想をすべて反映するのは難しいので、誤解がないよう、ここに記述しておきます。

税金滞納は、その時点では納税義務を果たしていないものの、「犯罪」ではありません。ここは注意が必要です。債権者である国や地方は、滞納が続くようであれば滞納者の財産を差押え、必要があれば公売して換価、滞納税額に充当することになります。滞納額がゼロになれば、「終わりよければ全てよし」となります。

資金繰りが悪い経営者なんて、世の中にはゴマンとしますから。滞納という事実だけ捉えて鬼の首を取ったようなこの騒ぎは、行き過ぎの感があります。

そこで今朝のニュース協力では、すこし視点を変えて「税理士としての滞納問題」に触れてました。私も税理士ですので、税理士としての立場で何らかの問題はないのか?といった切り口です。

税理士が懲戒などの「独自処分」を受けるのは、税理士法に抵触(以下に抜粋)した場合です。

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税理士法第37条(信用失墜行為の禁止)の規定に違反する行為のうち、以下に掲げる行為を行ったとき。
イ 自己脱税(自己(自己が代表者である法人又は実質的に支配していると認められる法人を含む。次のロにおいて同じ。)の申告について、不正所得金額等があることをいう。以下同じ。)(上記1に掲げる行為に該当する場合を除く。)
・不正所得金額等の額に応じて、2年以内の税理士業務の停止又は税理士業務の禁止
ロ 多額かつ反職業倫理的な自己申告漏れ(自己の申告について、申告漏れ所得金額等が多額で、かつ、その内容が税理士としての職業倫理に著しく反するようなものをいう。以下同じ。)(上記1及び2(2)イに掲げる行為に該当する場合を除く。) ・申告漏れ所得金額等の額に応じて、戒告又は2年以内の税理士業務の停止
ハ 調査妨害(税務代理をする場合において、税務職員の調査を妨げる行為をすることをいう。)
・行為の回数、程度に応じて、2年以内の税理士業務の停止又は税理士業務の禁止
ニ 税理士業務を停止されている税理士への名義貸し(自己の名義を他人に使用させることをいう。以下同じ。)
・名義貸しを受けた者の人数、名義貸しを受けた者が作成した税務書類の件数、名義貸しをした期間、名義貸しにより受けた対価の額に応じて、2年以内の税理士業務の停止又は税理士業務の禁止
ホ 業務け怠(委嘱された税理士業務について正当な理由なく怠ったことをいう。)
・戒告又は1年以内の税理士業務の停止
ヘ 税理士会の会費の滞納(所属する税理士会(県連合会及び支部を含む。)の会費を正当な理由なく長期にわたり滞納することをいう。以下同じ。)
・戒告
ト その他反職業倫理的行為(上記以外の行為で、税理士としての職業倫理に反するようなことをしたことをいう。)
・戒告、2年以内の税理士業務の停止又は税理士業務の禁止

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税理士自身の申告漏れの処分は、「2年以内の税理士業務の停止又は税理士業務の禁止」と厳しい内容です。税を扱う専門家ですから当然と言えば当然です。

では、滞納した場合に処分されないのか?税理士法には、滞納そのものの列挙はありませんが、上記「ヘ」に税理会会費の滞納というのがあります。税理士会会費の滞納より税金の滞納の方が「重い」ような気がします。また、上記「ト」には、その他反職業倫理的行為(上記以外の行為で、税理士としての職業倫理に反するようなことをしたことをいう。)、というのもあるので、いずれかの懲戒規定に抵触して戒告以上の処分がされる可能性があるのではと考えます。世間の人が、「税理士としてどうなのさ」と思うようなことは信用失墜行為になり得ますので。

さて、この方は財務副大臣です。税理士法による処分は行政手続法等に定める手続きにしたがって行われますが、懲戒処分権者は上司である「財務大臣」(笑)です。仮に財務副大臣の職を辞して、さらに税理士法の処分がされたとなると、うーん、笑えない笑えない。

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