雑感「文春オンラインの取材を受けて思ったこと」
| 税務調査
「実質的な強制調査」東京国税局の最強部隊“リョウチョウ”が東京女子医大の税務調査に着手!東京女子医大の闇 #4
と題して、文春オンラインが東京女子医大の話題を取り上げた。私は真偽に関わる部分は知らないのでコメントしていないが、調査担当部署が東京国税局・課税二部・資料調査三課(私の古巣のひとつ)ということで、どんな組織なのかという観点からコメントを寄せた。
東京女子医大に限らず、公益法人等や人格のない社団(以下、「公益法人」という)の税務調査の特殊性などについて、少し書き留めておきたい。
公益法人の「法人税」は、収益事業といわれる次の34業種を課税対象にしている。
例として、物品販売業、不動産販売業、金銭貸付業、物品貸付業、不動産貸付業、製造業、 通信業、運送業、倉庫業、請負業、印刷業、出版業、写真業、席貸業、旅館業、料理飲食店業、などがあり、株式会社などの普通法人が行う事業と被るものは、課税の公平の観点から、公益法人が34業種から稼得した利益には課税することとしている。34業種に該当しなければ課税なしである。
税務的に見ると、公益法人の損益計算は収益事業と非収益事業の2本立てにする必要があり、これが公益法人の税務調査をやっかいにしている理由の一つといえる。
公益法人が申告漏れになるケースは、
1 収益事業に該当する事業を非収益事業として処理
2 収益事業の損金(経費)のなかに非収益事業で計上すべき損金を計上
3 収益事業・非収益事業の共通経費を、内容によって収入、人数、面積などで按分する必要があるが適正に処理していない
調査官が架空経費を発見したとする。ただし、非収益事業の経費だった場合、そもそも課税対象になっていないので法人税の追徴はない(経済的利益を受けた人の所得税課税は別として)。また、金には色が付いていないので、原資不明現金を発見したとしても、収益事業から生じたものでなければ追及しても意味がない。
また、公益法人で不正経理の中心となる人物は、プロパー職員から専務理事になった者が少なくなかった。コンプライアンスやガバナンスが効いている公益法人はどのくらいあるだろうか。
記事の案件、調査結果は課税部案件なので公表はされない。つまり、結果注目して仮に申告漏れがあっても刑事事件に発展することがなければ知る由もない。一昔前なら、現職のときの仲間から情報が入ったりして(笑)文春さんなら、リークを拾ってくるかしら~