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徳井さんの申告漏れ関連で、私は連日ニュース番組などに出演している。

今回のニュースのポイントを、吉本興業リリースからまとめると、

1 設立から9期連続「無申告」であったこと。すべて国税の指導により「期限後申告」している。稼働法人では、なかなかお目にかけることが出来ない案件だ。

2 無申告となった事業年度のうち、4期分に仮装・隠蔽が認められ、行政罰としては最悪の「重加算税」対象とされたこと。時効が法定申告期限から7年なので、遡及して課税できなかった税金もあるだろう。ある意味「やり逃げ」とも見て取れる。

3 2013/3期~2015/3期は、期限後申告しただけでなく、納付すべき税金を滞納しており、結果として銀行預金の差押えされた。いきなり差押えはしないので、督促状がきても税務署に相談することなくスルーしていたのだろう。

4 法人税のほか、消費税及び源泉所得税にも非違があったこと。報道にはないが、このほかに法人事業税、法人住民税、個人住民税の追徴があるはずだ。

5 調査指摘内容を税理士が把握していないことから、税理士法に定める税理業務のうち「税務代理」を受任していないと推察。国税局と徳井さんだけで調査のまとめをした場合、国税局主張の追徴税額がまるまる課税されたおそれがあり、ここだけが唯一心配される部分だ。

6 法人だと社員の人数に関係なく社会保険が強制加入になるが、未加入のまま現在に至っている。
社会保険関係の役所の怠慢だな。

とまぁ、不作為とか、サボりなんて範疇をはるかに超えており、とてもではないが徳井さんに同情できる案件ではない。重加算税対象となった「追徴対象所得」(注:税額ではない)が2,000万円程度なので、国税犯則取締法による刑事告発はされないだろう。

無申告のうち、帳簿・書類を作成していない「放置プレー」タイプは、仮装または隠蔽の事実があったうえで申告していない、と事実認定するのは困難である。そもそも何もしていないのだから、故意に工作したとか一方的に決めつける訳にもいかない。そうはいっても、我が国は申告納税制度を採用しており、自ら計算して申告するというのが柱なので、申告すらしない無申告者が跋扈するようになると制度自体が危うくなる。したがって、無申告は申告漏れのなかで一番悪ということになる。

フジテレビ「バイキング」で共演した東国原さんがおっしゃっていたが、「初回は別として、無申告を2回、3回と重ねた場合、形式的に罰則適用すべきだ」という意見に賛成だ。

ただ、過去にこんな案件があったが覚えているだろうか。別に徳井さんのやったことを援護するわけではないが、書き記しておく。

元民主党代表の鳩山由紀夫(兄の鳩山邦夫を含む)が、それぞれ実母から毎月1,500万、年間1億8,000万円の贈与を受けておきながら、贈与税の申告をまったくしていなかった。相続税法違反疑いがあったが、本人が「母からの資金提供についてはまったく知らなかった。資金管理は秘書に一任し、虚偽記載も知らなかった」などと主張したため、鳩山本人については虚偽記載への関与があるとは認められないとして嫌疑不十分で不起訴処分とし、政策秘書だった勝場だけを、計約4億円分の虚偽記載をした罪で在宅起訴した。

元首相は、知らぬ存ぜぬで脱税事件を逃げ切った。払った贈与税は5年分だけ!(といっても1人9億円の申告漏れだが)それより前は時効になっている。ぜんぜん課税の公平ではない。真面目に贈与税を申告したことがある納税者は、「正直者が馬鹿をみる」ことになった訳だ。

そんな鳩山由紀夫は、過日、新党結成の呼びかけを行って、自らは「棟梁」になるそうだ。

さて、徳井さんは鳩山由紀夫と比べてどうなのか。両方とも単なるルーズで済ませていいのか・・・。少なくとも、徳井さんは相当の経済損失を受けるだろうし、信頼はドン底まで落ちるだろ。徳井さんは刑事罰を受けたわけではない。納税の義務でチョンボをしてしまったが、復活のチャンスは、是非とも与えてあげたいものだ。

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