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DIAMOND online 2016.7.25投稿

・パナマ文書、タックスヘイブンとは何か?
・富裕層はどんな税金対策をしているか?
・世界ではどのような脱税行為が行われているか?

富裕層とはどんな人たちか?
 一定の金融資産を保有する世帯を、一般的に「富裕層」と呼んでいる。保有資産の基準は各種機関によって異なるが、例えば日本の野村総合研究所の場合、超富裕層(世帯の純金融資産5億円以上)、富裕層(同・1億円以上、5億円未満)に分類した調査を報告しており、2011年の富裕層マーケットの規模は76万世帯、純金融資産の総額は144兆円とのこと。

 また、国税庁では平成18年頃から富裕層の管理、課税の適正化について施策を進めているようだが、富裕層の定義については公表していない。

富裕層は、「この税金」を気にしている
 世間で「金持ち」と呼ばれる人たちには二種類あると思う。一つはフローがある人(所得が高い人)で、二つ目はストックがある人(保有資産が多い人)である。フローがあってもストックがない人がいれば、フローがなくてもストックがある人がいる。必ずしもフロー「高」=ストック「多」ではない。

 富裕層とは、ストックがある人を言うのであって、フローに課税される所得税よりも、ストックに課税される相続税・贈与税を気にする傾向にある。相続税の最高税率は55%、税金計算上の諸控除を無視して計算すると、財産のザックリ半分が一瞬にして国庫行きとなる。富裕層の子孫繁栄、栄華の継承のためには、相続税・贈与税は出来るだけ避けたい。

相続税節税には限界がある
 相続税というのは、相続財産の価値に課税する税金である。ここでいう価値とは現金はそのままで、金銭以外は評価換算した額で相続財産とする。したがって、現金であれば100%評価なので全額が課税対象であるのに対して、土地、建物、有価証券などで保有すれば、100%未満の評価で課税対象とすることになる。

 旧来の相続税対策とは、この「評価」に着目した手法を採ってきた。アパート建設などもポピュラーで、被相続人(将来亡くなる人)の現金拠出と銀行借入(借入金は相続財産から控除可)をミックスさせた節税法である。もっとも、アパートの稼働率が悪いなど、不動産経営が失敗して目も当てられない事が少なくない。

 財産の評価を下げる手法は、あくまで「下げる」だけであって、遺族に継承する財産は必ず減少する。これが旧来型節税の限界と言える。

 貧乏人には無理な話だが、海外の様々な金融商品を活用(以下、スキームという)した場合、仮に相続税を適正に納税したとしても、結果的に遺族に継承する財産が増えている、という手法がある。あるいは、ループホール(税法の抜け穴)を利用して、形式上は完全合法により財産を贈与してしまうということが、富裕層には可能なのである。その方法を具体的に見ていこう。

富裕層と関わりが深いプライベートバンク
 プライベートバンク(以下、PBという)は、日本では馴染みが薄いかも知れないが、ヨーロッパではその歴史は古い。

 一般の銀行(商業銀行)は、預金者からお金を集めて、事業者などに貸し付ける。双方とも金利が付され、この金利差が銀行の利益となる。PBは、事業者に貸し付けることはせず、顧客資産からPBが受け取る信託報酬や顧客への金融商品の斡旋により保険会社などから受け取るコミッションが利益の源泉となっている。

 PBという名前のとおり、顧客の状況に応じてカスタマイズされたサービスを提供するのがウリであるが、最低預入額は100万米ドル(上昇傾向にある)からとハードルが高い。

富裕層のすごい節税法
 生命保険を質権設定することを条件に、PBから融資を受けて生命保険契約を締結(日本では最高保障7億円が限度だが海外では高額保障可能)。

 顧客は少額の自己資金で生命保険を購入でき、預金から自己負担保険料を払った残りをファンド購入などに充てて、保険購入のために融資を受けた借入金利息をファンド運用益で返済するスキーム。

 保険契約者が死亡すると、保障額から融資金を差し引いた額が相続人に継承される。保険加入年齢や保険商品によりリターンは異なるが、保険部分だけに限れば相続税納税後の財産は、PB預入額の2倍以上となることがある。

 つまり、何もしないよりもPBの保険スキームを利用したほうが相続税を払った後でも財産が増えるという、「ありがたい」サービスなのである。借入金を活用したレバレッジ効果といわれる。債権の購入もレバレッジを効かせることができる。債権の信用取引のような?ものである。金持ちはさらなる金持ちに、貧乏人とは格差が広がるばかりである。

 まさに、評価減による旧来の節税手法に対して、財産を増やして継承するという未来型の相続対策といえる。ただし、保険会社の倒産や予定運用利率の下降などによる、「持出し」のリスクはある。

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