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DIAMOND online 2018.2.14投稿

「免税」を利用した脱税行為とは?
 前回は密輸による金塊脱税の話を書いた。

 スキームは比較的単純だが、ともかく輸入しなければいけないので、税関監視のリスクだけでなく金塊そのものの盗難・紛失のリスクが伴う。

 昨年あたりから金塊密輸の摘発増加と関連ニュースの報道によって、税関当局の監視が厳しくなっているのは間違いない。空港内に貼られている密輸撲滅ポスターの数が証左といえよう。

 ところで、金塊脱税は密輸だけではない。

 中国の旧正月や国慶節になると、来日した中国人の爆買いがニュースになるようになって久しい。爆買いしている店は、いわゆる「Dutyfree」ショップである。消費税法の用語でいうと、「輸出物品販売場」(消費税法第8条)となり、諸要件を満たしたうえで所轄税務署長の許可を受ければ、非居住者に対して消費税を「免税」で商品販売することができる。

 銀座や秋葉原に行くと簡単に見られる光景だが、外国人観光客がパスポートをレジに出して商品を購入している場面に出くわす。輸出物品販売場で免税で売るためには、

(1)外国人観光客からパスポートの提示を受ける
(2)購入記録票の作成
(3)購入者誓約書の作成
(4)購入記録票を外国人観光客のパスポートに貼付
(5)購入者誓約書等を販売店で保存

 これらの手続きを踏む必要がある。これは、不正手段による免税販売を防止するための手続きといえる。外国人観光客は、日本出国の際、商品を外国に免税に持ち出す(母国に持って帰る)には、出国時にパスポートに貼付された購入記録票がないと消費税を徴税されることになっている。

 爆買いと金塊脱税のどこが関係するのか?そう、外国人観光客に「買ってもらったことにして」免税販売にするのである。免税で販売したことにすると、仕入にかかった消費税を確定申告で税額控除、つまり「不正還付」を受ける事ができるわけだ。

与党議員も関与!?
「免税」を利用した脱税行為
 金・白金の地金も過去は免税取引が可能だったのだが、平成28年4月1日以後の販売については免税扱いから除かれることになったので今はダメ。

 しかしながら、輸出物品販売場での不正スキームは、「高額商品」ならば何でもいいので、金製品(純度は低い)でも数をこなせば同様の効果を得ることができる。

 ちなみに、外国人観光客でなくても、外国に滞在している日本人ならば免税で購入可能である。物品税(奢侈品・嗜好品など、特定の物品を対象として課される間接税。平成元年の消費税の導入に伴い廃止)の時代は、低価格販売で同業他社に勝つために不正処理をしていた業者が散見されたが、消費税免税店の不正はロットが違いすぎる。新聞によると、約70億円の不正還付事件があったと報じられ、現在は係争中のようである。

 疑問が出てくるかもしれない。それは、「パスポートに貼付された購入記録票は出国の時に問題にならないのか」「外国人関係者が買ったとされる商品はどうなったのか」といったこと。購入記録票は、そもそも販売時に貼らなければいいし、商品は外国人観光客には引き渡していないようである。

 今年の1月に報道されたので記憶があるかも知れないが、自民党の政治家秘書が国税庁幹部を議員会館に呼び出し、自身が顧問を務める会社と関係のある免税店運営会社4社に対する税務調査についての説明を求めていた。

 国税庁への圧力ともとれる。このケースは金製品ではなく、宝石を外国人観光客に売ったことにしていたようだ。

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