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DIAMOND online 2016.8.8投稿

なぜ、国税OB税理士なのか?
 国税OB税理士は、現役時代に多くの税務調査案件に関わっている。税務調査では、事実認定(事実の価値評価と判断)と法令適用により、納税者の税務処理がセーフになったり、アウト(追徴)になったりする。法令適用の場面で、当局と納税者が揉めるケースは僅少であり、異議申し立てや訴訟に至る案件の多くは、「事実認定」に意見の食い違いがあることが原因である。

 事実認定について、少し説明しておく必要がある。税務調査の場面だと一般の人はイメージが難しいので交通違反を例にする。Aという人が自動車を運転していたとする。制限速度40キロのところを、追跡したパトカーに乗車していた警察官は70キロで走っていたとしてスピード違反を宣告する。本当に70キロで走っていれば30キロオーバーとなる。

 ただ、Aが走っている車を追跡して正確な速度を計測するためには、パトカーは同じスピードで一定時間走行しないと計測できない。ここにグレーゾーンが発生する。本当に正確な速度を計測できたのか。追跡方法、時間、証拠の有無などにより、速度違反を立証できるのか。測定器が故障していることだってあるだろう。これが事実認定というものである。

 事実認定の結果、30キロオーバーが「確定した答え」になって、ここで初めて道路交通法を適用することになる。まず先に「事実認定ありき」なのである。

 税務は様々な民事、商事を取り扱う。経済取引のほとんどが税法に関係しているといえる。取引に関するストーリーの構築や証拠の内容によって、事実認定が困難になる場合がある。白とも黒とも言えないような事実関係、これが「グレーゾーン」と呼ばれるものである。当局の「見方」、あるいは納税者側の「見せ方」によって、見解が分かれることが日常茶飯事である。

 国税OB税理士は、現役時代に多くの案件を処理してきたと冒頭で述べた。言い換えると数多くの「グレーゾーン」に関わってきたことになる。当局の主張に対して、抗弁の機会を存分に生かして、ときには不服申し立てをちらつかせて、「交渉」する能力がある。

 当局のいわゆる「射程距離」を熟知している。射程距離こそが国税OB税理士の武器であり、上場企業を含めた多くの企業が顧問契約している理由といえる。一種の保険商品であり、「税務調査で減額できた税金」に比べたら顧問料など痛くも痒くもない。

国税OB税理士には、2つのタイプがある
(1)早期退職組
 定年前に退職して税理士開業するOBである。親が税理士だったり、別のOB事務所を継承する者、まったくの新規開業に区分できる。さらに、在職中に税理士試験合格した者(試験組)と一定条件を満たして資格取得した者(試験免除組)に分けられる。

 早期退職組は、独立志向が高い者、組織に馴染めない者、組織で出世できない者、不祥事により退職せざるを得ない者など多岐にわたる。

(2)定年退職組
 定年になると第二の人生の選択をすることになる。15年前位までは、国税局や税務署を定年になった人のほとんどが税理士登録して仕事をしていた。国税組織で指定官職(副署長級以上)で退職すると、組織が顧問先を斡旋していたので、マーケティングや営業が出来ないダメな奴でも、お金を貰えたのである(ほとんどの退職者は民間では使えないが…)。地方国税局長や東京国税局部長級で退職した人の中で、当局斡旋による顧問料が年間3億円以上という猛者もいた。

 現在は、斡旋制度が廃止されたので、個人事業として食っていけるOBは少なくなった。必然、定年退職組で税理士登録する者は激減した。これは、市場にとってもとても良い事と言えるだろう。税法を良く勉強していない、なんちゃって税理士が減るわけだから。

現職との「癒着」は、なぜ起こるのか?
 言語道断だか、現職職員を接待したり賄賂を渡して、自分の顧客の調査情報などを収集するケースが多発している。ひどいケースでは、調査進行管理している税務署の統括官が、OB税理士から頼まれて「故意に調査対象から外す」という不正行為もあった。

 当局では、国税OB税理士との接触を制限しているが、同じ釜の飯を食った先輩から頼まれごとをされたら、簡単には断りづらいのかもしれない。飲み会がやたらと多いのも国税の特色である。一年の節目、事案の節目、同じ職場の飲み会、出身地別の飲み会、税務大学校の同期会など、本当に飲み会が多い。けれども、酒が入ると事件が起きやすくなる。そもそも、癒着が起きやすい体質なのかもしれない。

 大阪国税局管内で起きた事件では、国税OB税理士A氏が現役の頃に同じ部署で勤務した先輩後輩の間柄だった。先輩が職場を去って税理士になってからも交流は続いた。

 A氏が、後輩にKSK(国税総合管理)システムの課税検索資料(納税者の具体的個人情報)を不正に取得するように要請、現職の後輩職員はプリントアウトした課税検索資料を渡した。

 また、A氏の顧問先の税務調査の際に、後輩職員が調査担当者になったことがあり、追徴税額に手心を加えて相当の減額をして調査終結とした。見返りは、数十万円の「チップ」や繁華街での飲食代だった。

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